エモーショナルインテリジェンス(Emotional Intelligence)という言葉を聞いたことはありますか?日本では昨今、ビジネスパーソンの間で話題になっていますが、「感情的知性」、「こころの知能」を意味する言葉です。一言でいうと、「感情をうまく取り扱う力」です。
このエモーショナルインテリジェンスを子供の頃から育てることは、大人になってから充実した人生を送る上でも不可欠だと考えられています。
この記事ではノバキッドでもお馴染みの心理学の専門家、ギュリザル・シェヒトールがQ&A形式で子供のエモーショナルインテリジェンスを育てるコツをお伝えします。
ノバキッドは子供の好奇心や関心を育てる英語学習に力を入れるだけでなく、子供のウェルフェアやメンタルヘルスの問題について、私たちの意識を高めることを大切にしています。
Q:エモーショナルインテリジェンスとは?
A:エモーショナルインテリジェンスは、他人の感情を尊重しながら、自分の感情を適切に管理する能力(ソフトスキル)です。子供がエモーショナルインテリジェンスを学ぶのにふさわしい時期というのは、一概には言えませんが、何歳からでも学ぶことができるスキルです。臨床心理士として、私はできるだけ早く開始するべきだと考えます。
Q:エモーショナルインテリジェンスは「教わる」スキルなの?
A:そうですね、そう言えますね。例えばですが、生きるために誰か大人のケアが必要な赤ちゃんを想像してみてください。それはお母さんかもしれないし、他の誰かかもしれません。でも、その子はたくさんのものを必要としながらも、泣いてみせるだけで、何が必要かを伝えているのです。ここで親として反応しながら、子供に感情を教える方法をお伝えします。例えば、赤ちゃんがお腹を空かせて泣いているときには、「ああ、今お腹が空いているんだね、お腹が空いているから泣いているんだね」と声をかけるのです。子供のニーズや感情に対応した言葉を使うだけです。ここからエモーショナルインテリジェンスの育て方が始まるのです。
Q:感情に名前をつけてみるということですか?
A:そうですね、でも子供の年齢によって方法は異なってきます。子供が話し始め、社会的な環境と関わりをもつようになると、すべてが徐々に成長し始め、感情や衝動も成長します。親として積極的に子供と接し、子供の気持ちを汲み取り、一緒に生活を体験し、親が模範となることが求められます。親自身がどのように自分の感情を扱い、日常生活でどのように問題に対処しているのか?つまり、親のエモーショナルインテリジェンスを育てることも重要です。子どもは私たちの行動から学びます。
アイデア:感情にラベルを付け、名前を付けるのは良いアイデアです。そのためには、「感情ボキャブラリー」が役に立ちます。ステッカーでもいいし、イラストを使ったものでもいいですね。あるいは感情の語彙リストを作るのもいいですね。例えば日記やカレンダーに今日の気持ちを、このステッカーやイラスト、ボキャブラリーで書き込むのはどうでしょうか?こうすることで、今感じていることを話す方法が広がります。これは、子供たちにエモーショナルインテリジェンス(EI)を教えるためのとても良いツールになるでしょう。
Q:多くの親は、子供の気持ちを抑えこみ、その感情に価値を与えない傾向があります。例えば、「泣くな、何でもない」「怒るのはやめなさい、意味がない」。そうすると、子どもは、表現してはいけない「間違った感情」があると思い込んでしまうかもしれません。ネガティブな感情について、子どもと話し合うにはどうしたらよいのでしょうか。そして何より、子どもがその感情を理解し、対処できるようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
A:とてもいい質問ですね。質問に答える前に、いくつかの重要な要素、事柄を定義する必要があります。これらは、私たちが混乱しやすい2つの異なるものです:感情に間違いはありませんが、行動は間違った行動とそうでないものがあります。感情と行動をはっきりと区別する必要があるのです。自分のおもちゃを壊してしまい、ひどく泣き始めた子供を想像してみてください。彼の母親は こう言います。「大したことじゃないでしょう。自分で自分のおもちゃを壊して泣くなんて」。これは、子供の中に、何か自分が悪いことをしているのではないかという気持ちを誘発します。しかし、子供が何かを感じて泣くことは間違いではありません。子供のの感情を抑えるこむことは、子供に「自分は間違っている、自分の感情は間違っている」という気持ちを植え付けるだけなのです。話を続けましょう。子供がおもちゃを壊して泣き出し、お母さんを叩き始めたとします。これは間違った行動です。もちろん、母親はそれを止め、その行動は間違っていると言う必要があります。同時にかけたい言葉は、「そうだね、大切なおもちゃをなくしてしまって動揺しているのはわかるよ、でも私が一緒にいるよ」という言葉です。感情を肯定することはとても大切です。感情を正当に評価することは、感情的な知性を持つ人にとって不可欠です。なぜなら、私たちは幼少期に自分の感情の欲求がどのように満たされるかを学ぶからです。私たちが自分の感情をどう扱うか/それが可能かどうか、特に難しい感情をどう扱うかということは心の病気にも関係してくる問題です。
心理学者としての私の観察によると、親は感情と行動を区別していない場合が多いです。これは、親自身が自分の感情を処理できていないことが原因の一つにあります。親は、本当につらい感情とどう付き合えばいいのか、その方法を教わっていないだけなのです。もしあなたがその感情を体現していなければ、子供にその感情の扱い方を教えることはできません。自分が怒ったときにどう反応するのか、口では何と言うのか、ボディランゲージを理解するために、自分自身を振り返り、自分自身の感情と向き合う必要があります。また、感情は、私たちの行動と結びついています。意識する必要があります。
社会では、女性よりも男性が攻撃性を示すことが多いのですが、それは、自分の気持ちや感情を内に秘めておくように教えられているからです。「あなたは男だから、泣いてはいけない」と言われ、攻撃的になってしまうのです。感情とは、自分の本当の欲求を満たすためのスペースを与えてくれるものです。攻撃性というのは二次的な感情で、その下には必ず第一の感情があるのです。
Q:エモーショナルインテリジェンスの5大要素とは?
A:エモーショナルインテリジェンスは5つの要素に分解してとらえることができます。
1. セルフ・アウェアネス(自己認識)
ある特定の時間/瞬間に自分が何を感じているかを知り、それが他人にどのような影響を与えるかを理解することです。
2.セルフ・レギュレーション(自己管理)
これも非常に重要です。人は感情にどう反応するかをコントロールできるようになると、衝動的に行動したらどんなことが起こりうるかという結果も考えられるようになります。たとえば、赤ちゃんはこの部分が未発達なので、衝動的に反応します。自己認識と自己管理能力の高い大人であれば、「私は怒っている、一旦やめにして休憩しよう」となります。ですから、自己管理能力の高い親を持つことは、子供にとっても非常に恵まれた状況なのです。
3.モチベーション(動機づけ)
人生は時に厳しく、悪いことがたくさんあり、日々の問題に対処するのは容易ではありません。嫌なことがあっても、それを自覚して対処できるとき、それは子供たちが学ぶべきとてもよいモデルになります。
4.エンパシー(共感すること)
これは重要なことです。なぜなら、人がもっと他人の気持ちを理解することができれば…。共感というのは、子供と親が、起こりうる困難な状況について話し合うことです。たとえば、子どもは学校で人間関係の問題や学校の問題を抱えていることがあります。私たちは、子供がどう感じているか、どう反応するか、起こりうる状況やケースに対してどう解決策を見いだすかを子供に尋ね、話し合うことが大切です。
5.社会的スキル
人間関係を管理できるようになると、どのような行動が他人から好感を持たれるかがわかるようになります。
Q:EIの高さは大人になってからの成功と関係ある?
A:常に安心感を感じ、どの瞬間にも効果的な姿勢でいるには、神経系が重要だからです。多くの研究者が、EIの高さがIQの高さにつながることを発見しています。感情的知性のレベルが高い子供たちは、成績が良い傾向にあります。それは、彼らがより良い社会的接触を持つことができ、自分のニーズを表現し、助けを求め、感情を表現する方法を知っているからです。彼らは、感情的知能のスコアが低い人よりも、対立をうまく解決できる可能性が高いとされています。
また、『American Journal of Public Health』に掲載された研究成果も紹介したいと思います。幼稚園での子どもの社会性と情緒性が、生涯の成功を予見させることがわかったのです。5歳の時点で共有、協力、指示に従うことができた子どもは、25歳で大学の学位を取得し、正社員として働き始める可能性が高いというのです。これは、感情的知性とは何か、その役割を説明する非常に良い結果です。
Q:子供のEIを育てる上でのおすすめのアクティビティは?
A:以下の5つのことをお勧めします。
ステップ1.感情(お子さんと自分自身)に気づくこと。感情は相互に影響し合うものであり、人生の貴重な一部であることを理解し、観察し、耳を傾け、学びましょう。
ステップ2. 子供とつながる。子供の感情に注意を払い、それを否定したり避けたりしないようにします。
ステップ3.子どもの話に耳を傾ける。子供と一緒にいて辛いことがあると、私たちはすぐに解決策を持ち出してしまいがちです。これは最善の方法とは言えません。よりよい方法は、一緒に落ち着くことです。子供が話したがっているのなら、その欲求を満たしてあげましょう。もし、今すぐゆっくりと話すことができないのであれば、「今は話せないけど、1時間後/明日になったら話そうね。」と伝えましょう。
ステップ4.感情に名前をつける(お子さんのもの、ご自分のもの!)。感情ボキャブラリーを日常的に応用する。
ステップ5. 問題の解決策を一緒に探る、話し合う。何をするかという行動と、何を感じるかという感情を区別しましょう。していいこととだめなこと、行動に明確な制限を設けましょう。
今日はエモーショナルインテリジェンスの育て方についてご紹介しました。いかがでしたか?
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