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23.12.2021
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パラアスリート堀江航さんインタビュー~英語力が世界にチャンスを広げてくれた

目次

堀江航さんインタビュー~車いすバスケでアメリカ留学。選手・指導者として世界で活躍

大学生の時に交通事故で片足を失くし、車いすバスケットボールなどパラスポーツ選手・指導者として活躍する堀江航さん。中学時代は英語が一番苦手だったという堀江さんですが、夢をかなえるために米イリノイ大学に留学します。そこで日本人史上初の全米大学選手権王者に輝き、卒業後は欧州でも選手として活躍。最近は東京パラリンピックでルワンダ共和国の大使に就任するなど、その英語力をいかして活躍の場を広げています。そんな堀江さんに、英語とのかかわりや、学習の経緯、英語力が活きた経験について話しを聞きました。

英語が嫌いだった中学時代。車いすバスケで米留学を決意

堀江さんの英語とのかかわりは、中学進学とともにはじまります。そのときは「一番嫌いな科目だった」そうですが、転機が訪れたのは大学2年生の時。当時、流行っていたTV番組の「進め!電波少年」の人気企画である大陸横断ヒッチハイクに憧れ、オーストラリアのワーキングホリデーに行ったのがきっかけでした。

「大学卒業したら、きっとどこかに就職して、仕事するんだなと思ったら、今しかないと思って決めたのを覚えています。オーストラリアの畑で働きながら7ヶ月間過ごし、そのあと東南アジアで3~4か月くらいバックパッカーしていました。その時は、本当に挨拶程度の英語しか話せませんでしたね」

大学を1年間休学し、海外放浪でさまざまな体験をした堀江さんは、帰国後、残りの人生をサッカーに賭けようと練習に打ち込みます。が、部活からの帰り道、不幸にも交通事故に遭って、大切な片足を失ってしまいます。

事故後、負傷から回復したものの、しばらくスポーツから離れた堀江さんは、大学卒業してスポーツシューズの会社に障害者採用されます。ショップ店員として働き始めましたが、理想と現実のギャップに思い悩んでいたところ、出会ったのが車いすバスケでした。

「車いすバスケを始めて、所属チームのエースとして2年ほど試行錯誤しながら頑張りました。その中で、イリノイ大学に遠征に行くというチャンスを得たんです」

遠征先のイリノイ大学で、堀江さんはその環境の素晴らしさに感銘を受けたといいます。充実したプログラムとコーチ陣、専用の体育館など、車いすバスケをする環境が何もかも揃っていたからです。帰国の際お世話になった人たちに「またここに絶対に来る」と約束し、留学を決意しました。

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大変だったスポーツと授業の両立

車いすバスケをしたいという一心で渡米した堀江さんは、この時から本格的に英語を学びはじめます。

現地の生活は、ルームメイトやバスケチームのメンバーと過ごすことが多かったため、普段の生活の中で片言ながら会話を覚えていきました。日本人同士で行動するより、現地の友人に囲まれたことが「ラッキーでした」と堀江さんは振り返ります。

ですが、大学の勉強はなかなか大変だったようで、5年間を過ごしたアメリカ生活のうち、自由に意思の疎通をできるまでに3年かかったと言います。

「最初はあまり勉強をするという意識はなかったのですが、コーチから大学に来ているのだから、しっかり勉強しなさいと言われて。バスケの場合は、体を使って意思疎通できますが、大学の授業ではそうはいきません。講義を理解して、課題を提出するのは、とても苦労した思い出があります」

それでも、努力して大学院に進学し、大学時代とは比べ物にならない勉強量になってから、堀江さんの英語力は飛躍的に伸びたといいます。卒業する頃には、自発的にチームをリードしたり、グループでの会話やディスカッションができるくらい上達しました。

英語が話せて良かったことは数えきれない

バスケットボールと学業を両立し、堀江さんは日本人で史上初めて、全米大学選手権王者を獲得という偉業を成し遂げます。卒業後も、ドイツ、スペインのリーグでプレーし、ドイツリーグ優勝、ドイツカップ優勝、そしてヨーロッパチャンピオンズカップ優勝に導きました。

東京パラリンピックでのカヌー競技に挑戦しましたが、残念ながら選手として参加することはできませんでした。しかし、ルワンダ共和国のパラリンピック大使として、選手・スタッフの手伝いもしました。これも英語が話せるからこそ、得られたチャンスだったと堀江さんは言います。

「英語が話せて良かったことは、数え切れないくらいあります。欧州でプレーすることになったきっかけも、Facebookとか、SNSを通じたチームからの連絡でした。自分で交渉したり、条件を確認したりという場面で、英語はすごく役立っています。アメリカから欧州のチームに移る時もすごくスムーズでした」

自分の言葉で審判に意見したり、相手に気圧されないようにしたりできるかは競技の結果を大きく左右します。だからこそ、英語力は堀江さんの欠かせない武器になっているのでしょう。また仕事だけでなく、英語を話せることで、プライベートの面でもとても幅が広がったと堀江さんは話します。

「日本語が通じるのは1億2000万人だけですが、英語ができれば一気にその人数が10倍以上に広がります。英語ができるおかげで、間違いなく友達が増えました」

子どもたちが「英語が楽しい」と思える環境に導くことが大切

英語を学習するには、モチベーションを持ち続けることが大事ですが、子どもたちがモチベーションを高めるにはどんな工夫が必要でしょうか。堀江さんは、モチベーションも大事だけれど、「その先にある何か」を目標にするといいと言います。

「僕は中学生の時、英語が一番嫌いだったけれど、使うようになってから、その便利さに気が付きました。最初にオーストラリアに行ったとき、いろんな人と知り合えた体験が、すごく大きかったです。だから、子どもたちが興味を持ちそうな環境に導くことが、一番の近道なのではないでしょうか」

子どもたち本人が、一番楽しいと思うことが、英語の上達につながる。堀江さん自身も好きな洋楽を訳して、楽しみながら学んだといいます。だから、海外旅行に行ったり、日本でも外国人と交流できる観光地や、スポーツなら外国人選手がプレーする姿を見せるだけで考え方が変わってくるのではないかと話しました。

そして何より、「積極的に英語を使いましょう!話した分だけ、聞いた分だけ、書いた分だけ上達します。僕も間違っていたら恥ずかしい、と話しかけられない時期もありました」と、あまり肩肘張らず、コミュニケーションを取ることを楽しんでほしいと励まします。

2030年に向けて、札幌市が次の日本オリンピック招致を検討しています。その時も、英語力を活かして貢献したいと夢を描く堀江さんは、次のようなメッセージを私たちに残してくれました。

「積極的に話しかけて、コミュニケーションを取ることが、のちのちの人生に役立つときがきっと来ます。留学をしたころは、話せるようになりたいと思っていたわけではありませんが、結果的に話せるようになって、すごく可能性が広がりました。それは、スポーツだけではなく、生活の面でも同じです」

海外放浪で人と触れ合い、車いすバスケと出会ったことによって、どんどん英語の魅力にはまっていった堀江さん。好きなことを英語とともに追求した堀江さんの可能性は、公私ともに世界レベルまで広がりました。いま堀江さんは、車いすバスケにとらわれず、さまざまなパラスポーツにチャレンジしながら、スポーツの普及活動や子供たちへの講演など、活躍の場を広げています。これからも英語力をいかして、どこまでその活躍が広がるのか、今後にぜひ期待したいです。

堀江 航(ほりえ わたる)

車いすバスケットボール、アイススレッジホッケー、車いすソフトボールなど、さまざまなパラスポーツにチャレンジするアスリート。大学3年生の時、バイク事故により左足下腿切断する。社会人になってから、車いすバスケの夢をかなえるために米イリノイ大学に留学。その後、欧州にわたり、数々のプロリーグで優勝の栄冠に輝く。2018年には平昌パラリンピックにアイススレッジホッケー選手として出場。ブラジリアン柔術で健常者の中でのトーナメントの上位入賞も果たしている。

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